今月の主題 脳磁図で何がわかるか?
巻頭言
脳磁図の現状と未来
橋本 勲
1
Isao HASHIMOTO
1
1金沢工業大学
pp.971-972
発行日 2009年9月15日
Published Date 2009/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542102053
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脳磁図(magnetoencephalography;MEG)を用いた中枢神経系の基礎研究と臨床研究はわが国が世界をリードする数少ない分野の一つである.脳磁図はSQUID(超伝導量子干渉素子)磁束系を用いて脳内の神経活動に伴って発生する磁場信号を非侵襲的に記録したものである.錐体細胞の尖頂樹状突起に脱分極,過分極が生じると細胞内,細胞外に電流が流れる.細胞外電流を記録したのが脳波であり,細胞内電流により生じる磁場を記録したのが脳磁図である.
頭部は脳,脳脊髄液,頭蓋骨,頭皮の4つの層からなり,それぞれの導電率は異なる.したがって,頭皮上の電極から記録される脳波は異なる導電率による歪みを逃れることが出来ない.しかし磁場は4つの層を真空中と同じように透過できるため,歪みが生じない.これにより脳磁図の高い空間分解能がもたらされる.また脳波と同じく脳磁図は神経活動をリアルタイムに観測でき,ミリ秒(msec)以下の高い時間分解能を有する.さらに脳磁図は非接触計測であるために,脳波と比べてその検査時間が短縮されることは重要な点である.100チャンネル以上のSQUIDセンサーと同じ数の脳波電極を貼りつける手間と時間を想像していただきたい.
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