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はじめに
我が国では,高齢化社会にともない,変形性膝関節症(以下,膝OA)が増加の一途をたどっている.疫学的な観点からみると膝OAの有病率の高さは他疾患と比較しても特筆すべきものがあり,高齢となるにつれ増加し80歳以上では44%に達するとされている1).また高齢者における,その性差については男性で11~19%,女性で20~44%とされ,女性での高発生率が知られている2,3).今後,膝OAに対する予防を含めた医療対策は,高齢者のQOLを維持・改善するうえでますます重要性を帯びてきている.このような背景から,国際的にも2000年から2010年を「骨と関節の10年」(the decade of bone and joint)とし,関節の変性疾患に関わる諸問題の国際協力による解決が1つの目標として提唱されている点は頷けることである.
一方,医療経済学的な観点からみると,人工膝関節置換術などの手術的療法は,膝OA患者のQOL改善に貢献してきた.しかし,膝OAの有病率の高さを考慮すると,手術療法のみに頼った治療選択では医療財源を圧迫することにもなりかねない.今後,入院期間の短縮化や外来医療の重視傾向により,効果的な膝OAに対する外来における保存療法の充実が求められている.
ところが,我々理学療法にとって,膝OAはあまりにも日常茶飯事に遭遇する疾患であり,手術後の後療法としての理学療法に関心を寄せることはあっても,その保存療法にはあまり着目してこなかったのが現実であろう4).しかし,保存療法による膝OAに対する諸問題の解決や進行防止,更には予防への挑戦は,ますます重要性を帯びてくることが予想される.本稿では膝OA患者に対し,主に当院で実施している生体力学的評価を通して,その病態について述べ,その外来運動療法の現状と課題について言及したい.
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