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脊椎脊髄疾患の治療においては,診断の確立,治療法の選択とその時期および具体的手技,なかんずく外科的治療や理学運動療法を主体としたリハビリテーション医療をより迅速かつ高次元で遂行するため,脊髄機能障害の発生高位とその程度2,4,8),更には可逆性と可塑性3,5,6,9)を可能な限り正確に評価することが最も重要な事柄である.こういった観点から,脊髄造影や造影後CT,high-resolution MRIといったビジュァルで評価できる診断手技を利用し,脊髄形態とその機能評価の関連性について数多くの臨床的研究が行われている5,9).しかしながら,病態生理学的な脊髄機能障害の診断や評価はMRIで撮像された脊髄変形や脊髄萎縮とは決して似たものではなく,そのため筆者の教室では,脊髄機能の評価には筋電図や脊髄誘発電位,運動誘発電位といった電気生理学的検査2,4,8)を加えて診断し,可能な限り多角的な評価を目指してきた.
一方,PET(positron emission tomography)は,ポジトロン(陽電子)を放出するアイソトープで標識された薬剤を投与し,その体内分布をPET装置を用いて映像化する機能診断法である.全身の各臓器,組織の血流や代謝の変化が断層像として表わされ,更にはその定量化が可能である.通常の核医学検査と比較すれば,①感度と分解能が優れている,②定量性が高い,③被検者の被爆線量が少ない,④体内で代謝される生化学,生理学的に重要な物質を直接標識できる,などがその利点である.筆者らは脊髄,とりわけ頚髄の機能評価を18F-2-fluoro-deoxyglucose(18FDG)-PETで行い,特に頸髄症や頸髄損傷における残存脊髄機能の評価,予後や可塑性の評価7,11,12)を行ってきたので,その方法論や結果,将来的展望にも言及しながら論述する.
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