特集 プラトー?
EOI(essences of the issue)
高橋 正明
pp.861
発行日 1997年12月15日
Published Date 1997/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551104896
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■エディトリアル
リハビリテーションの分野で気になる用語にプラトーがある.本来的には高原あるいは高台の平坦地の意味である.形態が似ているためであろう,技能の習熟曲線に現れる停滞現象を表現する場合にも用いられる.我々の臨床目的の1つは失われた機能の再獲得である.生活に必要な動作やスキルを新たに習熟するために可動域拡大や筋力強化といった基礎訓練から種々の応用動作訓練まで行う.その習熟過程のどこかで停滞が起こる何らかの永続的な欠損がある場合,いわゆる健常者と同等のレベルまで達しない内に最終地点に到達する.リハビリテーションの分野ではその地点を表してプラトーという.
我々のほとんど誰もがプラトーという用語を知っている.プラトーがその現象を表現するだけに使われるものであるとすれば問題は起こらない.ところが,回復を期待して訓練に励むものにとってプラトーといわれるとショックである.計り知れない心理的影響を与える可能性がある.またプラトーの判断が客観的事実に基づくものを的確に表現しているのであれば,これはいろいろと役に立つ.しかしながら実際にはその判断の客観性はかなり心許ない.プラトーと言葉が発せられたとき,多くの場合患者サイドに強烈な負の影響力を持ち,しかもその判断は治療者サイドの一方的な主観によっているかもしれないのである.このことを常に意識しておかないとプラトーは独善かつ患者不在の医療の隠れ蓑となってしまう可能性がある.
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