あんてな
障害児に対するパソコン教育
坂本 悟郎
1
1東京都立光明養護学校
pp.116
発行日 1990年2月15日
Published Date 1990/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551102954
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脳性麻痺児のA君はことばをもたない.移動は電動車いす,下肢の指で操縦する.他のADLは全面介助である.A君が「文化祭」の劇の音楽を担当した.もちろん鉛筆も持てないし,楽器を奏でることも不可能である.彼は得意のパーソナル・コンピュータ(以下,パソコン)で曲作りを行なった.足指でのキーボード操作によるデータ入力は時間がかかる.当日は満員の体育館で上演され,みごとなできばえであった.今まで演奏経験は一度として無かったろう.終了後の彼の嬉しそうで満足した顔は今でも眼に焼き付いている.パソコンの可能性の大きさを改めて思い知らされた.
さて,障害児に対するパソコン指導には二つの側面がある.第一はA君が障害を克服する手段として「自助具」的に活用したように障害に応じた利用のしかた,および学習や生活に生かす方法の指導であり,第二にはパソコンの基本機器の構成や設定,基本機能の理解,オペレーション・システムの理解などの指導である.このような考えかたの下に,本校では1987年度から高等部「職業に関する科目」の中で選択としてパソコン指導を行なってきた.A君もその中の一人である.生徒たちはパソコンへ強い興味と関心をもち,大きな期待を寄せていることを身をもって実感している.
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