書評
―山田英司(著)―「理学療法士列伝―EBMの確立に向けて 山田英司 変形性膝関節症に対する保存的治療戦略」
森岡 周
1
1畿央大学健康科学部理学療法学科
pp.947
発行日 2012年10月15日
Published Date 2012/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551102608
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まずこの本を見た瞬間,「同期生よ! 思い切ったことをしたな」と思い,いろいろな言葉が脳の中を駆け巡った.それだけインパクトのある表紙と内容であった.「列伝」と聞くと,ギタリスト? などと思ったりもし,果たして理学療法士という職業にそのような言葉が当てはまるかは明言できないが,いずれにしても,理学療法士は医療者でありながら,職人としての要素を含んでおり,それを意図した書であると思う.
本書は3章の構成であり,第1章は「衣鉢相伝」と題して,著者のこれまでの臨床研究をベースとした記述である.衣鉢相伝とは教法や奥義を伝え継承することの意であり,平たくいえば,広く先人の事業や業績を継ぐことに当たる.著者はこれまで主に大学病院に属しながら変形性膝関節症の臨床研究を実施してきたが,それから得た保存的治療戦略に関して,運動学的あるいは運動力学的分析から一つの方向性を打ち出し,その具体的な実践例を丁寧に臨床的に記述している.衣鉢相伝と題されるように,著者には今までの自分の思考をありのままに伝えるが,後輩たちがそれをよりよい方向性に改変し,場合によっては批判し新しいものを創造し提案してもらいたい意図があるのであろう.
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