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本号の特集は,「緩和ケアとしての理学療法」である.緩和ケアとは,単に身体症状のコントロールだけでなく,心のケアも並行して行い,対象者のQOLを総合的に高めることを目的とするものである.palliative careとhospice careとは, 同義であるが,前者はイギリス,アメリカなどで,後者はフランス語圏で使用されているようである.わが国では,緩和ケア診療報酬料(1990年)が設けられたこともあり,「ホスピス・緩和ケア」と称されるようになっている.いずれにせよ,“ゆりかごから墓場まで”といった人間の生涯にわたるケアあるいは福祉国家を構築するためにも,理学療法士は緩和ケアに対して前向きに取り組む必要性があることはいうまでもない.
末永氏には,「緩和ケアの課題と展望」と題して,長年医師として緩和ケアに関与してこられた経歴に基づいて,わが国の緩和ケアの課題に触れ,それに関与する各専門職のあり方や今後の展望を述べていただいた.藤腹氏には,「日本の文化と看取りの作法」と題して,仏教思想の影響が強い日本の文化を概観していただき,死生観ではなく生死観(生き死に)を育むことが,各専門職に期待される看取りの作法,姿勢として大切であることの示唆をいただいた.石井氏他には,「がん専門医療施設における理学療法士の役割」と題して,緩和ケアの対象となる疾患別データを供覧いただき,その概要と特性に触れ,理学療法士の役割について述べていただいた.内山氏他には,「スピリチュアルケアの一手段としての理学療法」と題して,緩和ケアのプロセスにおけるスピリチュアルケアの実践について,症例を呈示して具体的に述べていただいた.瀬戸口氏他には,「脳血管障害患者の終末期における実態と理学療法」と題して,脳血管障害終末期の判断条件にpersistent vegetative stateを用いて調査されたデータを供覧いただき,それに考察を加えて理学療法のあり方を述べていただいた.
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