特集 ロコモティブシンドローム
介護予防とロコモティブシンドローム
牧迫 飛雄馬
1
Hyuma Makizako
1
1国立長寿医療研究センター認知症先進医療開発センター在宅医療・自立支援開発部自立支援システム開発室
pp.293-298
発行日 2011年4月15日
Published Date 2011/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551101918
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はじめに
2007年国民生活基礎調査によると,要支援となった主な原因は関節疾患が20.2%で最も多く,運動器の機能障害が強く影響すると考えられる骨折・転倒12.5%を合わせると要支援者の約3割が運動器の機能障害によって日常生活に支障をきたしているものと推察される(図1).高齢者では加齢に伴って複数の疾患を合併しやすく,運動器以外の機能障害により要支援や要介護が必要となった場合でも運動器の機能低下を来す危険は高く,これらが高齢者の日常生活活動(activities of daily living:ADL)の制限に影響を与える割合はさらに高いものと考えられる.これらの問題に関して,2007年に日本整形外科学会では「運動器の障害による要介護リスクの高い状態」をlocomotive syndrome(ロコモティブシンドローム)と提唱し,広く周知を図っている.このような運動器の機能障害を背景とする諸問題に対して,介護予防としての取り組みの有する役割は大きいものと考える.
本稿ではロコモティブシンドロームを広義に解釈して,運動器の機能障害に関わる骨,関節,筋肉,神経などの包括的な問題ととらえ,高齢者の運動機能の改善および生活全体の活性化をターゲットとした介護予防の重要性とその効果について紹介する.
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