書評
―田中宏太佳・園田 茂(編)―「動画で学ぶ脊髄損傷のリハビリテーション[DVD-ROM付]」
半田 一登
1
1社団法人日本理学療法士協会
pp.963
発行日 2010年11月15日
Published Date 2010/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551101795
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●理学療法士に修得してほしい有機的かつ臨床的な動画本
本書の帯に,『リハビリテーションは「動き」の医療,だから「動き」を見て理解する』と書かれています.これを読んで瞬間的に2つのことを思い出しました.1つはリハビリテーション(以下,リハビリ)の草創期に筆者が所属していた九州労災病院のリハビリ科は医師,作業療法士とMSWで構成されて,理学療法士は整形外科所属の時期があったことです.それは当時のリハビリ科部長の考えで,マッサージを中心とした理学療法士の行為はリハビリとは一線を画すというものであったからです.言い換えれば「動き」の医療が理学療法士に強く求められていました.もう1つ思い出したことは筆者の学生時代に「動きを観察し,それを模倣する」ことが教育の段階でしきりに行われていたことです.例えば,頸髄損傷者のプッシュアップ時における肘の固定法などをつぶさに観察し,それを模倣し,その上で新たな患者を指導するという手法が採られていました.これが本書でいう動きの医療であるリハビリの重要な教育方法であると確信します.
今日の理学療法教育の場ではさまざまな疾患による特異的な動きを観察できる機会は減少しています.臨床実習前の教育段階で患者の動きを観察する機会がほとんどなく,臨床実習においても臨床実習時間の短縮やリハビリ料での単位制の導入などによって困難性は高まる一方です.その中にあって脊髄損傷はリハビリ医療にとって重要な対象疾患でありながら,多くの理学療法士が経験できない疾患になりつつあります.しかし,理学療法士が専門職であるのならば常識として知っておかなければなりません.
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