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編集後記
高橋 正明
pp.648
発行日 2009年7月15日
Published Date 2009/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551101456
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世界保健機関(WHO)は,新型の豚インフルエンザの警戒レベルを6月半ばについにフェーズ5からパンデミック(世界的大流行)を意味するフェーズ6に引き上げました.わが国ではいくつかの地域を除き,すっかり話題にならなくなった感はありますが,冬を迎えつつある南半球では感染が急速に広まっているからだそうです.もしこのまま収束に向かうことができなければ,次の冬にはまたわが国にもその嵐が吹き荒れるのでしょうか.それまでに抑え込む体制が整うのを願うばかりです.今回は弱毒性で世界的には3~4年で収まると専門家はみているようですが,以前から警戒している強毒性の鳥インフルエンザの発生が一層の現実味を帯びたわけで,いくら医学が進歩しても,完全に安心して生活できる世界を作り出すことはできないというパラドックスが頭をよぎります.
さて,本号の特集テーマは「筋再生と理学療法」です.私事ですが,筋再生には特別な思い入れがあります.もう30年以上も前ですが,留学していたアイオワ大学でA. W.Ham著の「組織学」に掲載されているsatellite cell(衛星細胞)の写真を見せられ,それが筋再生の鍵を握っていると教わりました.その時,それほど重要な事柄に思いさえ巡らせることができなかった自分に愕然としたのです.それ以来,satellite cellは自分の無知さを知らしめてくれた細胞としてずっと心に残っているというわけです.
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