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●インピンジメント(impingement)とは
インピンジメントは「~に突き当たる,衝突する」という意味で,整形外科領域においてもその意味の通りに一般的な言葉としても使用されるが,殊に肩に関するある病態を表す言葉として半ば固有名詞的に認識されている.つまり,肩甲骨肩峰下と上腕骨頭との間(第2肩関節)で生じる衝突に由来する障害のことをimpingement syndrome,impingement lesions,あるいは単にimpingementと表現する.
従来より,この肩峰下での障害に対して,肩峰切除術が諸家により提唱されてきた(Watson-Jones,Smith-Petersen,McLaughlin).切除する範囲は報告者により異なるものの,肩峰を全層的に切除(acromionectomy)したため,三角筋の起始部を失ったことによる弊害が起こった.これに対し,Neer1)は衝突が起こるのは肩峰下面の前方1/3のみであるとの見地から,三角筋起始部を温存し,衝突する部分のみを水平にそぎ落とす方法(anterior acromioplasty)を提唱した.これ以降,インピンジメントという言葉が“Neer”とセットで固有名詞化していったようである.さらにNeer(1983)は,烏口肩峰アーチ(つまり棘上筋の出口)の形状が原因のものをoutlet impingement,そして元来インピンジメントの主役であった石灰沈着や大結節の変形治癒などをnon-outlet impingementと分類した.前者を3つのステージに分け,急性の肩峰下滑液包炎(スポーツによるオーバーユースなど)をステージ1,慢性の肩峰下滑液包炎や腱板炎(五十肩など)をステージ2,腱板不全断裂,腱板完全断裂,骨棘形成をステージ3として,インピンジメントが重症化していくなかで腱板が滑液包側から断裂していくとした.これに対し,腱板不全断裂はそのほとんどが関節面側にあり滑液包側ではないことから,断裂が滑液包側から起こるという説には異論を唱え(Uhthoff,信原2)),ステージ3を否定する者もある.
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