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早春の南薩路,総勢1万数千人のランナーが駆け抜ける,全国にも知られる「指宿菜の花マラソン」は快晴の中で行われた.例年雨や雪まじりの天気が多く悪天候に泣かされるが,今年はいつになく穏やかだった.わたしもかれこれ7回目の参加になる.今では年4回程度,各地のジョギング大会参加するようになった.このマラソン大会をはじめ初夏を告げる季節までがわたしにとっての毎年の挑戦となる(マラソンといってもわたしの場合10kmの部の完走ねらいで走っているのだが).今年の成績は過去7年で最低を記録したが,ほとんど練習してない状態で走ったわりには自己満足する成績だった.初めて走るころは家族も一応心配して応援に来てくれたものだが,今では一人で来て走って帰る寂しいランナーになってしまっている.しかし完走するとまだまだやれると少し自信になる.そして完走したあと無料でふるまわれる茶ぶし(鰹節とみそ,茶を混ぜたもの)の味がまた格別である.初回からいろいろな障害を持った方と出会った.下腿切断で義足の外国人,視覚障害のある方,脳性麻痺の青年,片麻痺のある方,ときに同じロードを走り,わたしの倍以上の距離を走る方もいる.そのエネルギーにいつも感心させられる.非常勤で教えている学生には障害を見る視点という講義でこの話をさせてもらっているが,答があるわけでなく,学生にとっては自身を見つめなおす契機になっているようだ.
その菜の花マラソンの終了後に聞いたことだが,今年はフルマラソンで一人のランナーが途中不整脈で倒れ,たまたま通りかかった医師2人の力で何とか一命を取りとめた.改めて救急救命の大切さを知る思いだった.もし自分がその場にいたらどういう対応がとれたのだろうかと心配になる.病院という環境では十分に応援をもらう環境やシステムが構築されているものの,「頼るのは自分だけ」といった環境で適切な行動がとれるのだろうかと今一度考えるよい機会になった.
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