資料
免疫染色の自動化
森 茂郎
1
,
森下 保幸
1
1東京大学医科学研究所病理学研究部
pp.407-409
発行日 1991年6月15日
Published Date 1991/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543906575
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はじめに
免疫組織学的技術(免疫染色)は,いうまでもなく組織切片上に特定の抗原物質を同定する方法であり,昨今,病理組織診断をはじめとする形態学の諸領域で繁用されている.この方法論の発達とそれに対応できる良質の抗体が多く開発されたことによって,組織切片から得られる情報量が非常に増え,この分野の近代化ともいうべき状況があることも周知のところである.
しかし,これらに必要な手技は,経験のある人の多くが感じるように,煩雑である.染色手技においても,抗体管理の面でも,従来の病理のルーチン業務とは異なる面倒さがある.抗体に関していうと,多くは10以上,施設によっては100以上もの,特異性や有効期限,希釈度の異なる抗体を扱うことになる.これらの劣化やコンタミネーションはあってはならず,たえず目を行き届かせている必要がある.特に希釈ずみの抗体は劣化しやすく,その管理は煩雑である.手技についても細かな配慮が必要である.各ステップでの作業は,実は化学や血清学で行う作業と本質的に異なるものではないが,他の検査室では単純に処理できることが,病理学の検査室ではその経験に乏しいことが悩みである.プロトコールが一定であれば同一の効果が得られるということはこと免疫染色に関してはあまり期待できないのであって,技術者によって,また,その日のちょっとしたコンディションの違いで,結果がバラつくということは日常的に経験しているところである.
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