増刊号 誰でもわかる遺伝子検査
Ⅱ.各論—遺伝子検査はどういうときに必要なのか
4.管理編
1)遺伝子検査とインフォームド・コンセント
川上 康
1
1筑波大学臨床医学系代謝内分泌学臨床病理学
pp.1152-1155
発行日 2002年9月15日
Published Date 2002/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543906387
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遺伝子検査に関連した議論
ヒトの全ゲノム塩基配列がほぼ解読されたことから,近い将来すべての遺伝子についての遺伝子解析が可能となるものと予想される.それに伴って遺伝子検査そのものの是非,検査の適応,具体的方法について各国で議論されているが,特有の文化・宗教・倫理観・法律といった諸問題がからみ合い,統一した見解が得られていないのが現状といえよう.
わが国では,諸外国と比較すると最近まで,遺伝子検査の倫理面に関する議論がされてこなかったが,単一遺伝子異常による遺伝病の頻度が極めて少ないということは要因の1つかもしれない.生活習慣病のように遺伝子多型の組み合わせにより発症リスクが高まるような多因子遺伝についても遺伝子検査が行われるようになったものの,感染症診断を除いた遺伝子検査の主たる対象は単一遺伝子異常といえる.例えば,世界で最も患者さんの多い単一遺伝子遺伝病であるサラセミア(地中海貧血),鎌状赤血球症といったヘモグロビン遺伝子異常は日本人ではほとんど報告がない.また,嚢胞線維症(cystic fibrosis)の保因者はアメリカでは約20人に1人,ヘモクロマトーシスの保因者はヨーロッパ系白人では約1,000人に5人と頻度が高いが,同様に日本人における報告はほとんどない.こうした理由などもあり,わが国では医療従事者,一般社会ともに遺伝子検査の認知度が比較的低かった.
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