増刊号 誰でもわかる遺伝子検査
Ⅱ.各論—遺伝子検査はどういうときに必要なのか
3.応用編—遺伝子検査を利用する
4)個人識別
(1)血液型
細井 英司
1
1徳島大学医学部保健学科検査技術科学専攻形態系検査学講座
pp.1132-1137
発行日 2002年9月15日
Published Date 2002/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543906381
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はじめに
血液細胞の膜上には,極めて多種類の蛋白質や血液型抗原が存在し,それぞれ固有の構造を有している.特に,血液型は個人の持つ遺伝子によって表現され,輸血や骨髄移植などの臓器移植時の適合性を考えるうえで極めて重要であり,個人識別,親子鑑定や犯罪捜査のための遺伝標識としても個人を識別するよい標識となっている.血液型判定法の基本は,1900年Karl LandsteinerがABO式血液型を発見したときより今もほとんど変わっておらず,血清学的な解析が行われている.
しかし,この方法は,使用する抗体の種類や反応性の違いなどにより判定結果が異なる場合がある.特にABO式血液型の亜型などの判定では,家系調査ができない場合には血液型が確定できない場合もある.近年,遺伝子工学の進歩によりABO遺伝子座の3つの主要な対立遺伝子(A,B,O)のcDNAの塩基配列の違いが明らかにされ,その塩基配列の差異により遺伝子型の判定が可能となり,AB型の亜型であるcisAB型をはじめとして一部の亜型の遺伝子学的診断,血液型キメラ・モザイクや家系調査を行わなければ判定できなかったA型およびB型のホモ・ヘテロ接合の識別が可能となった.
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