検査じょうほう室 一般:一般検査のミステリー
尿中変形赤血球の考えかたと観かた—誤判定要因は何か
三浦 秀人
1
1山形大学医学部附属病院検査部
pp.862-864
発行日 2002年9月1日
Published Date 2002/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543906298
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検査は宝の山である
(社)日本臨床衛生検査技師会出版ライブラリー「尿沈渣検査法2000」の尿中赤血球形態に関する大略は,非糸球体性の血尿と考えられる場合をisomorphic RBC(均一赤血球,図1)とし,金平糖状,円形状などで,ほぼ均一で単調であり,ヘモグロビン(Hb)色素に富む.一方,糸球体性の血尿を推定する場合をdysmorphic RBC(変形赤血球,図2,3)とし,コブ状,断片状,ねじれ状,標的状など,多彩な形態を示し,大きさは大小不同または小球性を示し,特に,acanthocyte(コブ状,有棘状,出芽状)は,診断的価値が高く,注目すべき所見である.
このように尿中の赤血球形態から血尿の出血場所を推定できると最初に報告したのは,BirchとFairley(1979年)である.彼らは最初から,出血場所によりその赤血球形態は異なるだろうと想定した訳ではないと想像される.恐らく,われわれが毎日しているのと同じように鏡検をしていたのであろうが,ある日突然,どうしてこんなおかしな赤血球が観られるのだろうかと疑問を持ったのだろう.読者の皆様も検査技師になってから,検査業務の中でこのような疑問を持たれたことは多々あるのではないだろうか.凡人は疑問を疑問として置き去りにして,挙げ句の果ては忘れてしまうのであるが,Birchらはその疑問を解明したところに非凡さがある.
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