検査データを考える
過換気症候群
佐藤 紘二
1
1国立療養所熊本南病院
pp.143-146
発行日 2002年2月1日
Published Date 2002/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543906124
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はじめに
過換気症候群(hyperventilation syndrome;HVS)は,特に新しい疾患概念でもないが,いったん発生すると異様な状態を呈するためぎょっとさせられることがある.かって新聞紙上に次のような記事が載ったことがある.「工場が建ち並んだ街の一画にある女子高校の校庭で体育の授業が行われていた時,突然校庭に異臭が流れ込み,居合わせた生徒が次々と息苦しさを訴えパニック状態となった.学校は驚いて救急車を要請し,多数の生徒を病院に搬送した.ところが,あれほど興奮状態で苦しい苦しいと訴えていた生徒たちが,1時間も経たないのに元の状態に回復して帰校した.」というものであった.これは,正に心因性の原因による典型的な過換気症候群の発生状況である.しかし,現在では過換気を起こす機序としては,このような心因性のものだけでなくほかにも種々の原因が推測されている.過換気状態では生体の炭酸ガス産生量に比し肺胞換気量が多過ぎるためPaCO2は低下し呼吸性アルカローシスに傾き種々の症状を生じる.
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