検査じょうほう室 輸血:輸血検査と血液型の謎
日本人に新しく見いだされた低頻度抗原
入江 史生
1
,
永尾 暢夫
2
1大阪府赤十字血液センター医薬情報課
2大阪府赤十字血液センター製剤部
pp.1180-1181
発行日 2000年8月1日
Published Date 2000/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543905592
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はじめに
赤血球抗原の中には,その頻度が極めて低く,ある特定の個人やその家族内のみに認められる抗原がある.これを低頻度抗原(private antigen)と呼んでいる.この低頻度抗原は,仮に抗体保有者が見つかり適合血液の必要性が生じても,抗原頻度が低いことからその確保は容易である.一方,妊娠においては,夫が低頻度抗原を保有し,その妻が保有しない組み合わせでは,低頻度抗原に対する抗体の産生により児が新生児溶血性疾患(hemolytic disease of the mewborm;HDN)に罹患することがあるので注意を要する.事実,わが国でも抗Kgや抗UlaによるHDNの報告1,2)がある.
低頻度抗原による母児不適合妊娠では,妊婦の抗体検査で陰性となり,出産後に児に原因不明の溶血症状が認められるといったことなどから精査し,抗体の存在に気づくことが多い.これは幾種類もの低頻度抗原を保有するO型血球を常に妊婦の抗体スクリーニングに用いることが極めて困難なことに起因する.これを回避するためには,夫血球あるいは出生後の児血球(抗体が感作された血球は使用できない)を用いて妊婦の抗体検索を行うとよい.また,HDNに関与する抗体の免疫グロブリンクラスはIgGで,その中には抗グロブリン試験のみで活性を示す抗体が存在する.これらのことから,妊婦の抗体検査に抗グロブリン法は欠くことのできない方法である.
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