絵で見る免疫学 基礎編・7
免疫グロブリンの種類と機能(3) 抗体の多様性
高木 淳
1
,
玉井 一
2
,
隈 寛二
2
1ダイナボット(株)器機診断薬事業部
2隈病院
pp.1046-1047
発行日 2000年7月1日
Published Date 2000/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543905553
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免疫グロブリンの遺伝子再構成
健常人には10兆(1013)個のB細胞が存在し,識別できる非自己抗原の数は1億(108)種と推定されている.しかし,ヒトが持っている遺伝子は約4〜10万個1)であり,また両親が獲得した免疫能,例えば病原菌に対する抗体の遺伝子は,遺伝的に子は受け継ぐことはできない.この謎を解くカギとなる発見が,1976年,利根川進博士によってなされた2).彼は,抗体を産生するマウスB細胞(免疫グロブリンを産生するミエローマ細胞を用いた)と抗体を産生しないB細胞以外の細胞(B細胞をほとんど含まないマウス胚細胞を用いた)の双方から,抗体のL鎖をコードしているDNAとmRNAの精製に成功し,両細胞のDNAの配列を比較検討した.抗体を産生するB細胞のL鎖の遺伝子では,DNAのC領域遺伝子とV領域遺伝子は互いに近接する位置に存在するが,抗体を産生しない胚細胞のL鎖の遺伝子のC領域遺伝子とV領域遺伝子は同じ染色体上にあるものの,かなり離れた位置に存在することを発見した(図1).
このことは,抗体を産生するB細胞のDNAは,抗体遺伝子を配列し直すということを意味している.本来,染色体の遺伝子配列は不変であるとされていたが,その概念を覆し,免疫グロブリン分子のアミノ酸をコードするV領域遺伝子とC領域遺伝子はともに遺伝的に受け継がれる限られた数からなる異なる遺伝子断片群として存在することをも実証した.
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