増刊号 血液検査実践マニュアル
Part 10 血液検査データに影響を及ぼす治療法
2.造血幹細胞移植
岡本 真一郎
1
1慶應義塾大学医学部血液内科
pp.980-983
発行日 2000年6月15日
Published Date 2000/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543905537
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
造血幹細胞移植(stem cell transplantation)とは,すべての血球に分化・増殖し,かつ自分自身を複製する能力を持つ造血幹細胞を移植する治療法である.現在,造血幹細胞移植は再生不良性貧血,白血病,悪性リンパ腫といった致死的造血疾患の治療としてばかりでなく,化学療法に感受性の高い固型癌の治療や,免疫不全症候群や小児の遺伝性疾患の治療として広く用いられている.
医学は進歩したが,現時点では造血幹細胞自身を純粋に分離し移植することは困難である.そこで,造血幹細胞を多量に含む細胞/細胞分画を輸注することで造血幹細胞移植は行われている.造血幹細胞源としては骨髄血が広く用いられてきたが,最近では末梢血あるいは膀帯血も用いられるようになり,各々骨髄移植(bone marrow transplantation;BMT),末梢血幹細胞移植(peripheral blood stem cell transplantation;PBSCT),膀帯血移植(cord blood transplantation;CBT)と呼ばれている.また,造血幹細胞移植は血縁者あるいは非血縁者より造血幹細胞を採取し移植する同種移植(allogeneic transplantation)と,自分自身の正常と考えられる造血幹細胞を採取・凍結保存し移植する自家移植(autologous transplantation)に分類される.
Copyright © 2000, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.