増刊号 血液検査実践マニュアル
Part 5 凝固・線溶検査
5.特殊検査
1)血小板機能検査
井上 克枝
1
,
矢冨 裕
1
,
尾崎 由基男
1
1山梨医科大学臨床検査医学講座
pp.865-869
発行日 2000年6月15日
Published Date 2000/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543905493
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検査の目的と意義
コラーゲン,エピネフリン,ADPなどの血小板活性化物質は血小板上のそれぞれの受容体に結合するが,血小板内情報伝達機構1)を介して,最終的には血小板上のglycoprotein(GP)IIb/IIIaを活性化させる.活性化GPIIb/IIIaはフィブリノゲンとの結合能を持つようになる.フィブリノゲンが糊のような役割を果たし,血小板同士がGPIIb/IIIaを介して架橋され,血小板凝集が成立する.ずり応力刺激時などには,von Willebrand因子(vWF)が,血小板膜上のGPIbと結合して,GPIIb/IIIaではなくGPIbを介した血小板凝集を起こす.ただし,in vitroの血小板凝集能検査においては,リストセチンによりGPIbとvWFの結合を惹起させる.生体内では,血管の損傷部位において血小板がコラーゲンなどの血管内皮下組織,あるいはコラーゲンに接着したvWFを認識し,そこに粘着することで血栓形成が開始される.さらに血小板活性化に伴って,血小板内の顆粒より放出される血小板活性化物質がさらに周囲の血小板の活性化を引き起こすというポジティブフィードバックが生じ,速やかに血小板凝集が進行する(図1).
本稿ではこれら血小板凝集能,粘着能,放出能の異常など,血小板の質的(機能)異常に対する検査について概説する.本検査が行われるのは次のような場合である.
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