技術講座 一般
一般検査における髄液細胞の見かた
大田 喜孝
1
1聖マリア病院中央臨床検査部
pp.349-357
発行日 2000年4月1日
Published Date 2000/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543905337
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- サイト内被引用
新しい知見
中枢神経系感染症の中でも細菌性髄膜炎はかつて予後不良の疾患とされ,大量の抗生剤投与で細菌を死滅させているにもかかわらず,その約30%が死に至り,生存しても約半数に聴力障害や麻痺などのなんらかの後遺症を残していた.1988年,Tuomanen1)は抗生剤による病原細菌の破壊が脳に強い炎症をもたらすことを見いだした.すなわち,抗生剤で粉々になった大量の細菌断片で免疫系が混乱に陥り,多量の炎症性サイトカインが放出されるとともに,おびただしい数の白血球が脳脊髄液腔に呼び寄せられ,脳に侵入しようとする.その結果として血液脳関門は壊れ,脳は激しい炎症を起こして膨張するというものである.1990年以降,米国で小児の細菌性髄膜炎に対し抗生剤とステロイド系抗炎症剤の併用投与が開始されるとともに死亡率は5%に低下し,後遺症も劇的に減少した.このように,髄膜炎発症のメカニズムとその治療法が確立されつつある現在,重要となるのは,いかに早期に発見し,早期に治療を開始するかである.中枢神経系感染症診断のために,まず取りかかりとして実施される髄液一般検査の果たす役割は極めて大きい.
Copyright © 2000, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.