病理検査こぼれ話
形態にこだわりましょう
竹下 盛重
1,2
1国立病院九州医療センター研究検査科
2国立病院九州医療センター臨床検査科
pp.326
発行日 1998年6月15日
Published Date 1998/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543903542
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10年以上も病理診断,研究などに携わっていれば,誰しも,いつも心の中で気になっている,またひっかかっている症例や剖検例があります.手前味噌の話で恐縮ですが,1988年ごろの剖検例で,はじめ大腿部軟部腫瘤で悪性線維性組織球腫(malignant fibroushistiocytoma;MFH)を疑われた例がありました.結局は大腫瘤を形成した成人T細胞性白血病/リンパ腫(adult T-cell leukemia/lymphoma;ATL/L)であったわけですが,通常見るATL/Lとは細胞形態上かなり異なることが気にかかり,このような例がないかと探したところ,やはり相当数あり,リンパ節,節外にみられる特殊な大腫瘤形成型ATL/Lであることがわかりました.また,その大部分がCD30(Ki-1)陽性大細胞リンパ腫の形をとること,白血化がごくまれ,白血化例に比べると穏やかな経過をたどることを特徴としました.
しかし,なぜこのような大細胞の状況なのか,なぜ他の型と比較して大きい腫瘤を形成するのかが次の課題になりました.まず,ATL/L細胞株を含め本疾患群の染色体異常から見ていくと,おもしろいことに,3,4倍体がその主体を占め,また大型B細胞リンパ腫に高率にみられる6qの異常も高率にみられました.アポトーシスや増殖因子の検討が必要なところです.
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