増刊号 病理組織・細胞診実践マニュアル
第III章 細胞診
2.検体
3)検体の受付と処理
b)固定法
畠山 重春
1
,
川名 展弘
1
,
松元 照美
1
1板橋中央総合病院中央臨床検査研究所(IML)
pp.195-197
発行日 1998年6月15日
Published Date 1998/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543903496
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固定は目的とする染色の特徴を最大限に生かすために行われる.したがって,対象とする染色に適した固定液を選択しなくてはならない.目的の染色に沿った固定をしっかりと行った場合にのみ各種染色法の特徴が生かされ,細胞内構造の把握が容易となる.また,細胞質の染色性にコントラストのある,いわゆるメリハリの利いた染色結果が得られる.それに対して,不適切な固定では核クロマチン構造の不明瞭化や,本来の色調とは異なった不鮮明な染色性となり,ひいては誤診を招く原因となることを肝に銘じておく.
固定法には細胞が乾燥しない状態のうちに迅速に固定する湿潤固定と,塗抹した細胞を乾燥させて固定する乾燥固定がある.乾燥固定と呼称されているが,細胞診標本の染色では通常,染色前に固定液を使用している.表1に細胞診で使用される固定液と対応染色法を示す.ただし,検体を採取してから塗抹処理し,さらに固定するまでの時間が標本のでき具合いに大きく影響する.表2に検体別許容時間を示す.
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