病理検査こぼれ話
日本の病理組織作製技術は世界一
立山 尚
1
1名古屋市立大学医学部第2病理学教室
pp.51
発行日 1998年6月15日
Published Date 1998/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543903451
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3年ほど前アメリカに行く機会があり,世界的に有名なある消化器病理の大家のもとで外科病理学を勉強させていただきました.その先生の所には全米各地から,ときには外国からも毎日十数例のコンサルテーションがあり,その症例を中心に教えていただきました.全米のいろいろな施設から送られてくるため,その標本の出来映えには差が大きく,非常に見にくい標本も少なからず見られました.先生は苦笑しながら「ヒサシ,この国では,まだこんな標本で診断しなくてはならない病理医が沢山いるんだ.それに比べると,日本の病理組織標本は世界のトップレベルだね.彼らはすばらしい技術を持っている」.この言葉を聞いたとき,私はまるで自分がほめられたように鼻高々で,最高の気分でした.われわれ日本の病理医は,ふだん世界一の病理組織標本で診断させてもらっているんだと再認識したしだいです(残念ながら,日本の病理医は世界のトップレベルだとは言ってもらえませんでしたが).しかし,このようにアメリカの病理医に言わしめたのは,単に日本人が器用だからではありません.多くのあなたがたの先輩方が,良い標本,見やすい標本作製をと切磋琢磨され,たゆまぬ努力があったからです.若い臨床検査技師の方には誇りを持って仕事をしていただきたいのと同時に,やはり常に,この病理組織標本の向こうには患者さんがいるということを忘れずに,最良の標本を作るよう心がけていただきたいと思います.
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