技術講座 微生物
病理組織標本内にみられる寄生虫の鑑別法
影井 昇
1,2
1国立感染症研究所寄生動物部
2東邦大学医学部公衆衛生学教室
pp.905-920
発行日 1997年10月1日
Published Date 1997/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543903245
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新しい知見
寄生虫病の診断には寄生虫の産卵現象をもとに,糞便や尿,血液などを検体として,それらの中に産出された虫卵や幼虫を見いだす方法が古くから行われているが,近年は寄生虫病がなくなったという理由から,それらの検査を行わない病院がみられるようになっており,その結果,回虫卵すら知らない医師はもちろん,臨床検査技師でもその鑑別のできない者がみられる.そのような中,幼虫移行症の問題が台頭し,それに伴って,その組織内幼虫体の鑑別の重要性が出てきた.これら幼虫移行症の診断にはもちろん免疫血清学的な診断も行われているが,現時点では免疫血清学的診断は診断の補助的役割のほうが強く,確定診断は組織内にみられる虫体の鑑別によらざるを得ない.このような幼虫移行症は今後も新しい種類が出現する可能性も十分あり,そのようなとき,本稿が少しでも役だてられればと考えている.
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