増刊号 輸血検査実践マニュアル
各論
輸血臨床
血液製剤の適応と適正使用
全血,濃厚赤血球—洗浄・白血球除去赤血球を含めて
田崎 哲典
1
,
大戸 斉
2
1岩手医科大学附属病院臨床検査部輸血検査室
2福島県立医科大学附属病院輸血部
pp.190-194
発行日 1997年6月15日
Published Date 1997/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543903134
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全血
1.赤血球保存液
全血はヒト血液に添加液(表1)を加えたものである.クエン酸は血液凝固第Ⅳ因子であるカルシウムイオン(Ca2+)を捕捉し,解離度の低いクエン酸カルシウムとすることにより,血漿Ca2+濃度は低下し抗凝固作用が発揮される.ブドウ糖は赤血球の代謝系にエネルギー源として極めて重要である.すなわち,解糖系を経て得られるアデノシン三リン酸(ATP)が解糖系自体の維持,陽イオンの膜輸送,赤血球膜脂質の維持などに利用される.従来,このACD(acid-citrate-dextrose)血が使用されていたが,2,3-DPG(diphosphoglycerate)の生成に有効とされるリン酸塩の添加で,赤血球の保存,輸血後の生存率がより良好となることから,現在では特殊な場合を除きCPD(citrate-phosphate-dextrose)血が日本赤十字社血液センターから供給されており,有効期間は4〜6℃保存で3週間である.
ヘパリン加新鮮血は保存中に凝固しやすく,赤血球の劣化も速いことから,有効期間も採血後24時間に制限されており,もはや体外循環装置を用いた手術にもほとんど使用されなくなった.ATPの合成要素であるアデニンを加えたCPDA-1はすでに5週間の保存液としてアメリカ食品医薬品局(FDA)で認可されているが,わが国ではまだ認められていない.
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