今月の表紙
白血球動的機能観察法
巽 典之
1
,
田窪 孝行
1
1大阪市立大学臨床検査医学
pp.111
発行日 1996年2月1日
Published Date 1996/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543902614
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白血球が生きていることを確信するには運動像をわが目で見ればよいのだが,これがなかなか容易ではなく,ちょっと刺激を加えるとまん丸な球形になってしまってきれいな運動形を見せてくれない.球の状態を見て運動構造を論ずるは「講釈師見てきたような嘘を言い」てなことになるから顕微鏡を凝視しつつ白血球に動け!動け!と叱咤激励する.ちょうど,寝ている孔雀に「羽根を広げろ」と叫んでいるようなものである.今回は運動状態細胞微細観察法について略記してみよう.
最近の臨床検査室で行われる一般的好中球機能検査法といえば,Boydenチャンバーを用いる遊走機能,蛍光マイクロビーズを用いた貪食機能検査であるが,これでは細胞集団としての機能検索は可能であるが個々の細胞の詳細は検索しにくい.図a,bはヒト好中球によるヒト赤血球貪食像である.ヒト赤血球ゴーストでもって家兎ウサギを免疫しヒト赤血球抗体を作製し,この抗体に反応させた赤血球を好中球浮遊液と混合,電子顕微鏡用メッシュに載せ一定時間後に固定し,あるいはスライドグラス上に載せ位相差型顕微鏡で観察したものである.この像を撮るのには実験開始から撮影まで約2か月半を要した労作である.これらの像を綿密に観察することで貪食に伴う細胞膜表面の情報伝達機構や免疫受容体機能などの解析に大いに役だつ.
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