検査ファイル
アデノシンデアミナーゼ欠損症
崎山 幸雄
1
1北海道大学医学部小児科学教室
pp.898
発行日 1995年10月1日
Published Date 1995/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543902524
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アデノシンデアミナーゼ欠損症とは
アデノシンデアミナーゼ(ADA)はリボヌクレオシドであるアデノシンをイノシンへ,デオキシアデノシンをデオキシイノシンへ脱アミノさせるプリン・サルベージ経路の触媒酵素である.ADAはヒトのほとんどすべての組織・細胞に存在するが,その活性は組織・細胞によって異なり,胸腺で最も高く,次いでリンパ組織・胃腸管・脳皮質で高く,赤血球では最も低いとされている.リンパ球では系統,分化レベルによって差があり,T細胞はB細胞より,T細胞でも胸腺内T細胞は成熱T細胞よりもその活性が高いことが知られている.一般にこのようなADA活性の差は細胞内でのADA mRNAのレベルを反映しており,T細胞とB細胞での活性の違いはmRNAの転写効率の差によると考えられている.
ADA欠損は細胞内にアデノシン,デオキシアデノシンの蓄積をきたし,アデノシンの増加は細胞内のcAMP濃度を増加させて,メチル化にかかわるS-adenosylhomocystein hydrolase(S-AH)を不活化させること,デオキシアデノシン(dAdo)の増加はDNA修復機構を障害すること,リン酸化デオキシアデノシン(dATP)の蓄積はDNA合成に必須の酵素であるリボ核酸還元酵素を阻害してDNA複製を障害することなどが知られている.
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