トピックス
事象関連電位P300の臨床
柿木 隆介
1
1岡崎国立共同研究機構生理学研究所統合生理研究施設
pp.363-364
発行日 1995年4月1日
Published Date 1995/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543902303
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はじめに
われわれは外界からのいろいろな刺激に対し,驚いたり,それが何であるか確認しようとしたり,場合によってはその刺激を予測して待っていたりする.そのようなヒトの心の動き,すなわち大脳で起こる心理反応を客観的に観察できればおもしろいに違いない.ただしそれは通常の脳波検査では極めて困難である.そこで開発されたのが脳波の加算平均法というもので,これはある一定の条件の刺激に対しほぼ一定の時間に定常的に出現する反応脳波を多数回加算して,それを加算回数で割る方法である.この方法により特殊な反応は残存するが,それと関係ない反応は限りなくゼロに近くなる.すなわち通常の脳波検査では隠れてしまうような小さな脳活動を記録することができるのである.これを大脳誘発電位と称しているが,その中でも,初めに述べたような心理課程を客観的に記録しようとする試みがあり,これを事象関連電位と総称している.P300電位〔刺激後約300msec後に出現する陽性(positive)電位〕はその代表的なものである.P300は1965年にSuttonら1)により初めて報告され,脳内の情報処理課程(記憶,認知,期待,判断など)に関係すると考えられており,近年の科学技術の進歩により急速に研究が発展してきた.
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