今月の表紙
甲状腺髄様癌の細胞診
都竹 正文
1
,
𠮷田 則行
1
,
坂本 穆彦
2
1癌研究会附属病院細胞診断部
2東京大学医学部病理学教室
pp.828
発行日 1994年9月1日
Published Date 1994/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543902122
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- 文献概要
甲状腺癌のうち濾胞上皮由来には,乳頭癌(papillary carcinoma),濾胞癌(follicular carcinoma),未分化癌(undifferentiated carcinoma)がある.傍濾胞上皮(C細胞)由来には髄様癌(medullary carcinoma)がある.甲状腺癌の発生頻度は乳頭癌80〜90%,濾胞癌10%に対して,髄様癌では全甲状腺癌の数%である.悪性度は濾胞癌ないし乳頭癌と未分化癌の中間に位置する.家族性に発生することが多く,また,副腎に褐色細胞腫が合併することがある(シップルsipple症候群).カルシトニンのほかにセロトニン,ACTH,CEAなどを分泌する.腫瘍の間質には,しばしばアミロイド沈着を伴うが,必発ではない.腫瘍細胞はグリメリウス染色陽性で,電顕的には神経内分泌顆粒が証明される.細胞診では腫瘍細胞はカルチノイド類似の小型円形ないし類円形のものから紡錘形を呈するものまで腫瘍細胞形態は症例によりさまざまである.標本背景にアミロイドを確認すればその診断は容易となる.腫瘍細胞の核には核内細胞質封入体を認めることがあり,低分化型乳頭癌との鑑別が必要となる.免疫組織化学的に腫瘍細胞がカルシトニン陽性となれば診断は決定的である.
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