トピックス
胸腺外T細胞分化とその意義
牧野 康彦
1
,
谷口 克
1
1千葉大学医学部附属高次機能制御研究センター免疫機能分野
pp.177-178
発行日 1994年2月1日
Published Date 1994/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543901815
- 有料閲覧
- 文献概要
外敵から個体を守るための生体防御機構である免疫系は,異物を食べるマクロファージや抗体を産生するB細胞およびそれらの細胞に外敵の情報を伝え,免疫系全体をコントロールするT細胞などの相互作用によって成立している.免疫系の司令官であるT細胞は,骨髄の造血幹細胞由来の未熟なリンパ球前駆細胞が,胸腺で教育を受け,いろいろな役割を持ったT細胞に分化するものと考えられてきた.胸腺におけるT細胞の教育は,第1に外界のあらゆる異物(抗原)に対応できるように多様な抗原受容体を持ったT細胞のレパートリーをそろえる(1つのT細胞は1つの抗原に対する抗原受容体しか持ちえないので,抗原の数だけT細胞の種類が必要になる)ことである.多様性獲得のメカニズムは,抗原受容体遺伝子は独立した1個の遺伝子が存在するのではなく,いくつかの遺伝子断片が寄せ木細工のように集まって1個の発現型の遺伝子ができあがる遺伝子再構成という特殊な遺伝子発現機構によることが明らかにされた.
ところが,あらゆる抗原に反応できるということは,その中に自分自身と反応してしまうT細胞(自己反応性T細胞)も含まれることになり,生体にとっては大変不都合なことになる.そこで,第2の“自己・非自己の分別”あるいは“選択”と呼ばれる機構が必要になる.自己と強く反応してしまうものは,あらかじめプログラムされている“死のシグナル”によって細胞死(アポトーシス)に至る.
Copyright © 1994, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.