生体のメカニズム 遺伝子の異常・2
癌と遺伝子
黒田 敏彦
1
1東京大学医科学研究所病理学研究部
pp.159-164
発行日 1994年2月1日
Published Date 1994/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543901808
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癌細胞の染色体分析を行うと,染色体の本数が増減していたり,染色体の一部が他の染色体に転座するなどの異常がしばしば観察される.例えば,慢性骨髄性白血病(CML)でみられるフィラデルフィア転座が有名である.このようにある特定の疾患で特定の染色体変化がみられるということは,その変化が腫瘍化の原因となっていることを予想させる.分子生物学の進歩とともに核酸単位での遺伝子の異常が検出可能となり,癌細胞の遺伝子では核酸レベルでもさまざまな異常が起きていることが明らかになってきた.1970年代終わりごろには癌遺伝子といわれる遺伝子群が,そして1980年代終わりごろから癌抑制遺伝子といわれる遺伝子群が次々と明らかになっている.これらの遺伝子のうちいくつかは,先に述べた染色体転座の部位に見いだされたり,癌細胞で高頻度で突然変異を起こしていたりして,腫瘍化に深くかかわっていると考えられる.この稿では,癌遺伝子・癌抑制遺伝子の概念から,実際の発癌における役割などについて考察してみたい.
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