けんさアラカルト
痛みとツボ
川喜田 健司
1
1明治鍼灸大学生理学教室
pp.808
発行日 1993年9月1日
Published Date 1993/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543901671
- 有料閲覧
- 文献概要
東洋医学,特に鍼灸の分野では,ツボと呼ばれる部位の圧痛の有無を調べてその診断材料の1つにしている.現代医学が種々の検査機器と専門家を動員して,きめ細かな検査を行い,その結果に基づいて診断を行うことに比べると,この圧痛の測定は極めて簡便である.しかし,X線写真などのなかった時代の腹痛の鑑別診断には,腹背部の筋緊張,圧痛が重要な役割を演じていたことを思い起こせば,その有用性をあながち否定できない.
この圧痛部位は,診断に用いられるだけでなく,その部位に刺激を加えることが鍼灸の臨床で行われている.鍼灸に限らず,どこか体の調子が悪いときにツボと呼ばれる部位に圧迫を加えると,痛みが和らぐことを経験した人も少なくないであろう.しかし,冷静に考えれば,診断するための部位が治療部位としても用いられていることは,現代医学的な立場からみると奇異な感じは否めない.
Copyright © 1993, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.