けんさアラカルト
ヒトの大脳半球の機能的,形態的非対称性の起源
小嶋 祥三
1
1京都大学霊長類研究所
pp.418
発行日 1993年5月1日
Published Date 1993/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543901569
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ヒトとその他の動物を分けるもの,それはなんだろうか.ヒトは二足で歩き,言葉を話し,道具を作り,使う.また,ヒトは利き手を持ち,巧みに模倣する動物でもある.このように考えてくると,ヒトを人間らしくしているものは,ヒトの大脳左半球であることに気がつく.すなわち,ヒトの利き手は右であり,主に左半球がその運動を制御している.左半球の言語関連領域が損傷されると,言葉を話したり理解することに障害が出てくる(失語症).観念失行や観念運動失行は道具(物品)使用や模倣などの高次運動機能の障害であるが,やはり左半球の損傷によって生ずる.ところで,これらヒトを特徴づけるものの萌芽が,チンパンジーなどの大型類人猿にみられることが最近明らかになってきた.
このようにヒトの大脳半球の機能には左右差がみられるが,形態的にも左右で異なっていることがわかっている.ゲシュヴィントらは音声言語に関係する左の側頭平面が右よりも大きいことを報告し,広く認められるようになった.さて,脳の機能的,形態的非対称はヒト以外の霊長類にまでさかのぼることができるのだろうか.類人猿を含め,サルがヒトのように右利きであることを十分な根拠を持って示した論文はない.
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