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B型肝炎の劇症化と肝炎ウイルスの変異
小俣 政男
1
,
江畑 稔樹
2
1東京大学医学部第二内科
2千葉大学医学部第一内科
pp.1032-1033
発行日 1992年11月1日
Published Date 1992/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543901333
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日本におけるB型肝炎ウイルス(HBV)キャリアは人口の約1.5%であり,ほとんどが出生時の産道感染により起こり,数十年の経過の後に年間発生肝癌2万人の約20%の原因となる.一方,成人になってからB型肝炎ウイルスに感染した場合は急性肝炎として一過性感染で終わる場合が多いが,時に死亡率の高い劇症肝炎となる.これら病態の多様性はウイルス側よりは,宿主の応答により説明されてきた.しかしながら,ウイルス遺伝子を種々の病態で検索すると,そこにはさまざまな変化があることがわかってきた.
従来より,HBe抗体陽性の母親から感染した児がしばしば劇症肝炎を起こしやすい,あるいはHBe抗体陽性の女性と交渉を持った男性が数人劇症肝炎になったという報告があった.HBe抗原陽性者はウイルス量も多く感染力も強いことは昔からよく知られている.しかし,ウイルス量の少ないHBe抗体陽性の患者からの感染でなぜ劇症化しやすいかは長い間不明であった.
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