増刊号 尿検査法
II.各論
12.有機酸
(3)シュウ酸
伊藤 晴夫
1
1帝京大学医学部附属市原病院泌尿器科
pp.146-147
発行日 1992年5月15日
Published Date 1992/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543901099
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はじめに
人体中ではシュウ酸イオンは生理学的あるいは生化学的機能をもっていない.病理学的には,シュウ酸カルシウムが水にきわめて難溶であるために,カルシウムとシュウ酸が尿中で過飽和の状態となると結晶核が形成され,これが成長ないし凝集して尿路(腎)結石が形成される1).腎結石の約9割はシュウ酸カルシウムを主成分とする.ただし,尿中にはシュウ酸カルシウム結晶の成長・凝集に対する抑制物質が含まれているので,結石形成は尿中の溶質濃度と抑制物質とのかね合いで決まる2).尿中シュウ酸は内因性に産生されるものと,食事に由来するものとがあるが,結石形成に対しては尿中のシュウ酸はカルシウムよりもはるかに強い影響を与える.また,尿中シュウ酸濃度が正常より少し高くなっただけでも,尿中のシュウ酸結晶量が急激に上昇する.
これらのことから,尿中のシュウ酸の測定は正確でなければならないことが理解される.
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