生体のメカニズム・10
主要組織適合遺伝子複合体
柏木 登
1
1北里大学医学部移植免疫学
pp.972-975
発行日 1991年10月1日
Published Date 1991/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543900847
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主要組織適合遺伝子複合体(major histocompatibility complex;MHC)は,その名の通り,同種移植の拒絶反応の原因となる主要な移植抗原を決める遺伝子の複合体として定義された.しかし,MHC産物の組織適合抗原としての機能は,人為的な同種移植が行われたために浮上したむしろ副次的なものであって,本来の機能は,個体が外来抗原に対して発揮する免疫応答の過程において中枢的な役割を果たす分子のひとつであると考えられている.その理由は次のことが明白となったからである.
体内に入った蛋白質性の抗原体は,それが単独の分子であろうと,あるいは巨大な化学構造物に組み込まれた複合体の一部であろうと,マクロファージを代表とする抗原提示細胞によって食作用された後は,細胞内でペプチドのレベルまで分解される.そのペプチドは,抗原提示細胞の作るMHC分子と複合体を形成した後,細胞表面に表現されてくる.そして,T細胞上にある抗原レセプター(T cell receptor;TcR)の結合する抗原体は,このMHC分子・ペプチド複合体だけであって,他の形態の抗原体は,蛋白質であれ,脂質であれ,糖質であれ,TcRと結合することができない.
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