トピックス
HLA欠損症
前田 平生
1
1埼玉医科大学総合医療センター輸血部
pp.883-884
発行日 1991年9月1日
Published Date 1991/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543900823
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■HLA抗原の欠如
ヒト主要組織適合性複合体(MHC)抗原であるHLA抗原がリンパ球細胞膜上に発現されていないまれな症候群は,“bare lymphocyte syndrome(BLS)”と呼ばれ,Touraine1),Schuurman2)らにより最初に報告されて以来,これまで約30症例程度の記載がある.
これらの報告によれば,BLSには多様性があり,発現不全のHLA抗原の種類により,①HLA-A,B,C抗原などのクラスⅠ抗原が欠如しているクラスⅠ-BLSと,②HLA-DR,DQ,DP抗原などのクラスⅡ抗原が欠如しているクラスⅡ-BLSに大きく分けられるが,両者の中間型も存在する.②群についてはクラスⅡ-SCID(クラスⅡ抗原欠損-重症複合型免疫不全症)とも呼ばれている.典型的な症例の臨床症状は,重症複合型免疫不全症(severe combined immunodeficiency;SCID)のそれであり,乳児期より口腔内カンジダ症,肺炎,難治性下痢のSCIDの3徴候を呈する.初発症状は,これらの反復感染であり,来院時は重症であることが多い.その他,HLA抗原の発現不全は認められるが,乳幼児期より反復感染を認めない成人のクラスⅠ-BLSも報告されている3,4).
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