トピックス
心臓移植—拒絶反応および感染症との戦い
白倉 良太
1
,
川島 康生
1
1大阪大学医学部第一外科
pp.1624-1626
発行日 1990年12月1日
Published Date 1990/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543900474
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はじめに
欧米において心移植は既に医療として定着,普及しており,年間2,500例前後の心移植が行われている.国際心臓移植学会の統計によると,1989年末現在,約240施設において,1968年以来これまでに12,631例の心移植が行われた.年齢は生後1日目から78歳まで幅広く行われているが,40歳と50歳代が大部分を占めている.シクロスポリン(CSA),プレドニン(PRD),アザチオプリン(AZP)の3者併用療法になってからは,世界の成績は1年生存率が84%に,5年生存率が75%にまで上昇した.
移植患者の死亡原因はそのほとんどが感染症または急性拒絶反応によるもので,この2者で85%を占めている.これまで有力な免疫抑制剤が登場するたびに移植成績は飛躍的に向上してきたが,現行の免疫抑制療法は,程度の差はあっても,個体が持つ免疫機能を全般的に抑制する方法である.拒絶反応を抑えるために,感染防御や制癌などの機能を抑えねばならないのである.感染症を減らそうと思うと拒絶反応が増えるし,拒絶反応を抑えると感染症が増えることになる.感染症および拒絶反応との戦いこそ移植医療のポイントなのである.
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