ザ・トレーニング
血清酵素異常の鑑別1—病態とアイソザイム異常
戸沢 辰雄
1
1兵庫医科大学中央検査部
pp.494-500
発行日 1990年5月1日
Published Date 1990/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543900138
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はじめに
血清中に存在する酵素は,少数のものを除き血中で生理作用を発揮するものではなく,組織細胞の中で生理作用を発揮する酵素が逸脱してきたものである.そして,これらの血清酵素は逸脱酵素と呼ばれている.これらの酵素の血清レベルは,その酵素を含む臓器や排泄臓器の障害の程度に応じて変動する.したがって,血清酵素の臨床検査としての有用性は障害臓器が推定できることである.しかし,一つの臓器だけに含まれる酵素はないので,一つの酵素の血清レベルだけから特定できる障害臓器はない.他方,生体内に広く分布しているものの,臓器ごとに含まれる酵素量に大きな差がある酵素では,推定できる障害臓器をある程度は限定できる.さらに,複数の酵素の血清レベル異常の共通性から障害臓器を特定することができる.また,臓器により特有のアイソザイム構成比を示す酵素では,血清アイソザイム構成を知ることにより障害臓器を推定することができる.
一方,病態からは説明がつかない血清レベルの異常や奇異なアイソザイムパターンをきたす現象が,次々に見つけられてきている.これらの現象は,酵素自体の異常や,他の血清成分が結合することによる酵素異常により起こる.そこで,これらの現象があることを念頭に置いて血清酵素診断することが必須である.
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