けんさアラカルト
検査過誤を減らすために
前川 芳明
1
1天理よろづ相談所病院臨床病理部
pp.208
発行日 1990年3月1日
Published Date 1990/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543900059
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質のよい検査データ
日常,私たちが品物を選ぶ場合,それが“安くて品質のよいもの”であることを一つの判断の目安とするが,患者が質のよい検査データ(を出す所)を選ぶことはなかなか難しいし,直接選ぶ手段を持たない.質のよい検査データとは,報告値が患者本人の真の状態を正しく反映していることであろう.私たちが毎日の精度管理を行っているのも,このためにほかならない.
患者の真の状態を誤らせる原因の一つは,系統誤差,いわゆる精度管理された状態においてもなお存在する誤差であり,これはある程度察知可能な誤差である.しかし,これ以外にも予測不可能(偶発的)な誤差がある1).例えば,検体の受け付け時に検体番号を貼り間違ったために別の患者のデータを報告してしまった場合,前回値との比較を行えば発見できるが個々の分析者では発見が難しい.また輸液を行っているときに同じ腕から採血を行った場合,電解質のデータが異常に高値に出る.この場合は,検査室だけで気をつけていても発見できないことがある.
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