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Calphobindins(CPBs)
真木 正博
1
1秋田大学医学部産婦人科
pp.183
発行日 1990年2月1日
Published Date 1990/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543900052
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1.発見の歴史
胎盤の絨毛間腔には母体血が流れており,絨毛上皮を介して母児間の物質交換が行われている.絨毛間腔は血液を満たしているという点では血管腔に相当するが,絨毛間腔壁には血管壁の内皮に相当するものはない.いわば擬似血管みたいなものである.絨毛間腔を流れる母体血の流速は緩徐であり,かつ凝固性亢進,線溶抑制の状態にある.また,胎盤組織には組織トロンボプラスチン,第XIII因子,プラスミノゲン・アクチベーターインヒビター2なども多く含まれており,それらの製品の原材料として利用されているくらいである.
以上のような条件は,Virchowのいう血栓形成のための3条件(血管壁の異常,凝固性亢進などの血液異常および血流の停滞)を満たすものである.しかしながら,生理的条件下では,絨毛間腔血流はよく保たれており,血栓形成は少ない.したがって,絨毛間腔にはなにか抗血栓機序があるに違いないと考えて,私たちは研究を進めてきた.既知の胎盤における抗血栓物質としては,トロンボモジュリン,多糖類硫酸エステル,PGI2,ADP分解酵素(ADP凝集抑制)などがある.私たちが発見した物質はCPBと称する組織トロンボプラスチン拮抗物質である.
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