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クロウ・深瀬(POEMS)症候群とVEGF
橋口 照人
1
1鹿児島大学大学院医歯学総合研究科血管代謝病態解析学分野
pp.634-636
発行日 2023年6月1日
Published Date 2023/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543209009
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はじめに
クロウ・深瀬(POEMS)症候群は診断の初期より血清VEGF濃度の著しく上昇する症候群である1).わが国における発生頻度は10万人当たり0.3人とされる2).多発神経炎,浮腫,肝脾腫などの臓器腫大,内分泌異常,色素沈着,剛毛,血管腫などの皮膚症状を主徴とする特異な症候群であり骨病変およびMタンパクを伴うことが多い.本症候群の特異的な臨床症状のなかで浮腫は初発症状として多発神経炎に次いで最も頻度が高い.この浮腫は時に胸水,腹水などを伴う全身性浮腫でありsystemic capillary leak syndromeとして血管透過性因子の存在が想定されていた.本症候群においては特徴的症候の他に持続的凝固亢進状態の存在が知られ,虚血性微小血管障害あるいは急性動脈閉塞を高率に合併する3).
本症候群においては同一患者の血清VEGFが血漿VEGFに比べ著しく高値であり,異常高値を示す血清VEGFは主に血小板由来である.VEGFは骨髄あるいはリンパ節にて増殖した異常な形質細胞により産生されると推測されるが血小板に蓄積される機序は明らかではない.血小板の血管内皮細胞上への粘着凝集により放出されたVEGFの局所濃度は著しく高まり,その生理活性(血管透過性亢進作用,血管新生作用)を過剰発現させると推測される4).本症候群は指定難病16に指定5)されている.
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