- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
最近の人工知能(artificial intelligence:AI)ブームは,深層学習(deep learning)に牽引されているといってよい.この深層学習は,脳の神経回路網を模したニューラルネットワークを利用した機械学習の方式である.ニューラルネットワークそのものは1930〜1940年代に提唱され,1970年代には文字認識などに利用されはじめた.その後,2006年に深層学習の嚆矢としての多層ニューラルネットワークが実現され,さらに畳み込みニューラルネットワーク(convolution neural network:CNN)により,2012年に画像認識のエラー率を17%とこれまでの手法よりも10%以上も向上させ,2014年には5%程度まで改善した.
そのような深層学習が流行した理由に,プログラム言語Pythonの開発とPythonに直結するオープンソースとしてのCNNの実現が挙げられる.オープンソースであることから,Pythonにより深層学習のさまざまなCNNを簡単に扱うことができる.さらに,Googleが提供しているGoogle Colaboratoryでは,ブラウザ上でPythonを記述・実行でき,深層学習で必要なGPU(graphics processing unit)にも無料でアクセスできるため,簡単に深層学習を実行することができる.このように,深層学習には,機械学習の研究者に限らず,誰でも比較的容易に利用できる環境が整っている.
そのような深層学習の微生物検査への導入として,本稿では,グラム(Gram)染色を取り上げる.そして,深層学習に必要不可欠となるアノテーションや学習結果の評価方法について説明した後,深層学習のグラム染色画像への適用例について述べる.なお,深層学習の詳細については,例えば文献1を参照していただきたい.
Copyright © 2023, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.