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ペースメーカ治療における左脚ペーシングの意義
荷見 映理子
1
,
藤生 克仁
1
1東京大学医学部附属病院循環器内科
pp.700-703
発行日 2022年7月1日
Published Date 2022/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543208730
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はじめに
心臓が収縮する際に,最初に心房が興奮した後,その興奮が刺激伝導系と呼ばれる伝導速度の早い特殊な心筋細胞を伝わって,右心室と左心室に同時に興奮が伝わる.このシステムによって心室全体が同時に興奮し,効率のよいポンプ機能が発揮される.この刺激伝導系の中心にヒス(His)束があり,その下で右脚と左脚に分かれて,それぞれ右心室,左心室につながっている.
従来のペースメーカ治療では,心室をペーシングする際に右心室を直接興奮させる.すなわち,通常の収縮と異なり,右心室心筋が最初に興奮し,刺激伝導系を介さず伝導速度の遅い通常の心筋細胞を興奮が伝わり,ゆっくり心室中隔心筋,左心室心筋へと伝わっていってしまうため,右心室と左心室が同時に興奮できず,ポンプ機能として効率が悪くなる.
このため,右心室ペーシングは左心室の非同期収縮を生じさせ,左心室のリモデリングや収縮・拡張能障害を引き起こし,長期予後を悪化させる1).正常心機能患者であっても,右心室ペーシング率が40%を超えると,心不全入院が増加するだけでなく,心房細動の発生頻度も増加する2).
そこで生理的な心臓収縮を再現するために,刺激伝導系を先に興奮させる刺激伝導系ペーシングが行われはじめた.刺激伝導系ペーシングには,そのペーシングする部位によって,より心房側をペーシングするヒス束ペーシングと心室側の左脚領域ペーシング(本稿では略して“左脚ペーシング”と呼ぶ)がある.
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