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現在の超音波診断装置はPOCUSを中心に進んでいる
超音波診断装置は大きくカート型とモバイル型に分けられる.東京慈恵会医科大学附属病院でも毎年超音波(ultrasonography:US)診断装置の購入要望が各診療部門から上がってくるが,近年ノートPCタイプに代表されるモバイル型のUS装置は,その機動性や低価格などの理由から,病棟やスペースの限られている特定の外来診察スペースでの需要が増えている.いわゆるPOCUS(point of care US)を目的とする装置のマーケットが世界的に増大している.ノート型US装置は,さらにスマートフォン(以下,スマホ)型ならびに通常のスマホに接続可能なUS装置として進歩してきた.一方で,POCUS分野では,穿刺や生検手技に両手を使うことから,US装置の画面が好みの位置に固定できるカート型の需要はまだ高いのが現状である.また,近年のUS装置の高性能化に伴い,ハイエンド装置の価格はますます上昇傾向にあり,医療経営が苦しい病院にとっては頭の痛い問題となっている.
もともとUS装置はその利便性と低価格であることや最小限のメンテナンスを背景とする経済性により,日本では販売が伸びてきた.しかしハイエンド装置のマーケットは現状の日本では限界があると考えられる.人工知能(artificial intelligence:AI)の観点からすると,US装置に搭載されるグラフィックボードの利活用が考えられるが,US装置の電源確保と省スペースのため,ハイエンドUS装置のこれ以上の大型化には疑問が残るし,ハイエンド装置のみでのAI活用では,後述する専門家並みの病変指摘などのAIの利点を多くのユーザーが享受できなくなってしまう.したがって近い将来,US装置のAI診断支援はAIサーバーを設置して,クライアントであるモバイル型US装置と無線ネットワークを使ってAI診断支援を行う手法のほうが実用的であると考えられる.
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