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病理診断を学ぶ全ての医学生・若手医師への最初の一冊
本書は全ての医学生・若手臨床医にとって病理診断のロードマップを示してくれる重要な一冊です.診断にかかわる臨床家の私達としては,病理診断の技術や考え方は専門家に頼りきりではなく自らも理解する努力を払う必要があります.本書は,その学習のわかりやすい手順を与えてくれます.評者は個人的に,「病理診断はフィジカル診断の一環」くらいの距離感で,親近感を持っています(その意味では本書は《ジェネラリストBOOKS》シリーズでもよいのかとも思います).なぜなら,フィジカルでは血管を直視できるのは眼底と爪くらいですが,病理の場合は全て直視,つまり病理は究極の視診ともいえるでしょう.フィジカルの延長という理解で行けば,「病理診断」のとっつきにくい(?)印象が少しでも払拭されるのではないでしょうか.
個人的には愛媛大学在学時の基礎配属が病理学(第二病理学)だったために,病理(特に腎)にはとても親近感を持っていますが,そのような曝露でもないと,病理の魅力に行きつくまでには心理的距離があるかもしれません.本書はそのような距離をぐっとゼロに近づけてくれます.その理由は,おそらく本書の心臓となる第1章の病理総論の整理の表(p.9)に示されるように,病理組織の見方,考え方のbig pictureが示されていること,異常のパラメータをベクトル図で示したもの(p.12)をはじめとして,病理を理解するための視覚化が明快に行われていることだと思います.それに続く章では,弱拡大・強拡大のレンジを使い分けることで全体を見ることの重要性,さらに,組織を傷害する病態の代表的な分類である腫瘍・炎症で切り分けた病理の見方,また特殊染色・免疫染色の理解についての章というわかりやすい展開になっています.
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