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消化器疾患に携わる者が診療内容を充溢させる,座右に置くべき良著だ
著者の一人である二村聡医師とは某研究会や編集会議を通じ10年以上のお付き合いをさせていただいている.確信に満ちたその声色と表現,そして「言葉・用語」に対する妥協のない姿勢を見聞きするにつけ,親しくなるまでは年長者と思い込んでいた(失礼!)くらいだ.氏の講演から学ぶ多くの知識はもちろんだが,美麗な写真には毎度ながら感嘆すること枚挙にいとまがなかった.特に美麗なマクロ写真からは見る者に迫る主張が感じられる.ピントを合わせてガシャの写真とは一線を画すことを理解するのに,目的意識を持った人間ならそれほど時間は要さないはずだ.
この度,氏の共著となる『臨床に活かす病理診断学—消化管・肝胆膵編 第3版』の書評を担う機会を得た.最初に気付くのは,専門書にありがちなとっつき難い文体とは一味違ったスタイルが親しみやすく,内容がすんなりと頭に入ってくることである.限られたページ数の中,美麗なマクロおよびミクロ写真,そしてシェーマがこれでもかと収載されており著者らの本書にかける熱意が伝わってくる.生検場所や採取のポイントとピットフォール,切除標本の扱い方,用語の説明など,この一冊で十分な内容だ.文章は過不足なく記載されており,本文が冗長にならないよう追加説明は小さな赤字の脚注として左右に配置されている.また「Coffee Break」や「耳より」「ここがHOT」などの頭を休ませるコーナー(コラム)が全体に散りばめられており,読者を飽きさせない構成も評価したい.“脳の休憩”と表現はしてみたが,多くが実臨床に役立つ内容であり臨床医への熱いメッセージや応援でもあるのだ.さらに注目したいのは表紙と背表紙の裏を利用し,抗体や組織化学染色を表に,用語を一覧にして,読者がすぐに確認できる点である.まさに臨床医の日常的疑問と利便性に対応しており,限界まで本スペースを活用した著者と医学書院の創本姿勢に賞賛を送りたい.
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