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現場で有用なベセスダシステム2014手引書
坂本穆彦先生編集の『子宮頸部細胞診運用の実際—ベセスダシステム2014準拠』の第2版が発刊された.執筆は坂本先生をはじめとし,今野良先生,小松京子氏,大塚重則氏,古田則行氏ら細胞診の第一線で活躍するエキスパートである.
本書は「Ⅰ.ベセスダシステムの成り立ちとその要点および運用」「Ⅱ.判定の実際」「Ⅲ.報告書作成の実際」から構成されている.紙面を多く割いているのは「Ⅱ.判定の実際」であり,ベセスダシステムの項目に合わせて「A.標本の適・不適の評価」「B.陰性」「C.扁平上皮細胞異常」「D.腺細胞異常」「E.その他の上皮性腫瘍および神経内分泌腫瘍」「F.その他の所見」について多くの写真と詳しい記述が示されている.また,それぞれがさらに小項目に分けられ,代表的な細胞像の所見を箇条書きでリストアップされている.重要なポイントや注意点などは“memo”として適所にわかりやすくまとめられている.また,ASCやAGCなどしばしば遭遇する実際の運用上の問題点などについても,要所要所で丁寧に説明されている.例えば,「ASC-Hは,傍基底型の異型扁平上皮細胞に対して用いられる傾向にある.しかし,萎縮像に対する明確な取り決めがない.現実的には萎縮像における異型扁平上皮細胞が腫瘍による細胞変化なのか,炎症など非腫瘍性の細胞変化なのかを判断することは難しく,非腫瘍性の細胞変化もASC-Hとして評価しなければならない場合もある」(p.90)など,まさに実践向けの手引き書であるといえる.また,日米の判定基準の差についても,米国のCIS判定基準の一つである,「合胞性に出現する細胞像は,わが国でいうところの『異型未熟扁平上皮化生』『異型予備細胞増殖』の像と重複しているところがある」(p.104)など,わが国の細胞診の視点から解説されており,ベセスダシステム2014の理解を深めるために役立つであろう.
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